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第10惑星?
Sedna(セドナ)と文明史


 

 「第10惑星発見か」というニュースを、最近よく耳にするようになった。観球子が最初に気づいたのは2002年10月初旬のことである。折りしも日本ではノーベル賞フィーバーに沸き返っていた。このフィーバーの影で、ごく地味な扱いでQuaoar(2002 LM60)発見のニュースが報じられていた。日本語ではクワァワとでも記したらよいのか。大きさは直径1,200Kmくらいと推定されていて、冥王星の軌道のすぐ外側を公転している。冥王星が直径2,300Kmほどなので、半分強の大きさになる。

 しかし大きさもさることながら、その軌道要素に興味が引かれる。太陽系で新規に発見される公転天体の軌道離心率は、一般にかなり大きいのが普通であるが、Quaoarのそれは非常に小さい。つまり円形軌道に近いのである。主要な天体の中では金星、海王星、地球についで4番目に小さい軌道離心率である。

 その後、興味があって色々調べてみると、Quaoarの発見以前にも2002 AW197、Ixion(2001 KX76)、Varuna(2000 WR106)等が発見された際に、「冥王星に次ぐ巨大天体発見か」と興味と興奮をもって発表されていたようだ。こうした新規発見の「巨大天体」は、主に海王星以遠に広がるエッジワース・カイパー・ベルト天体群(EKBO)に属するもので、現在もQuaoarを発見したカリフォルニア工科大の研究者グループによって、精力的に探査が進められている。




Sedna(セドナ)の発見

 

 Quaoar発見後しばらく静かであったが、2004年に入って俄かに慌しくなってきた。2月には2004 DW(後にOrcusと命名)の発見が報じられた。推定直径約1,500Kmで、「第10惑星発見か」の見出しつきで報じられた。しかしこの時は、ちょっと変だなと感じた。Quaoar発見の時は発見者が命名して発表したのに、今回は仮符号のみである。発見者はQuaoarと同じグループで、「冥王星に次ぐ巨大天体」発見のはずなのにである。

 疑問はすぐに解けた。3月に入ると、またまた同じグループがSedna(2003 VB12)発見を発表した。推定直径約1,600Km、もちろん「第10惑星発見か」の見出しつきの報道である。この時の発表では、2003年11月にSednaを発見、翌2004年2月に2004 DW(Orcus)を発見したということであった。2004 DW(Orcus)は発見から一週間を経ずして発表されているが、Sednaは発見から発表まで4ヶ月掛かっている。Quaoarの時も6月に発見されてから10月の発表まで4ヶ月を要している。

 既にSednaの存在を知っている発見者たちにしてみれば、今さら2004 DW(Orcus)に命名して発表という気にはならなかったのかもしれない。Sednaの発表が迫っているということもあってか、慌しく2004 DW(Orcus)の発見を発表している。2004 DW(Orcus)にとっては甚だ不幸?なことに、発表された時点で既に幻のタイトル「第10惑星か」であったが、これすら僅か一月足らずでアッサリと奪取されている。ツキのない天体と言えようか。


 しかしSednaとて安閑?とはしていられないようだ。現在も同じ研究者グループによる精力的な探査が続けられており、将来冥王星クラスあるいは、それより大きな天体が発見されたとしても、驚くにあたらないと言われているのだから。同グループによる探査は2005年には一応区切りがつくということなので、来年にかけて期待が膨らむ。

 発見者のグループがSednaの軌道要素を決めるに当たって、観測データを過去に遡ってチェックしたところ、14年程前まで辿ることができたそうだ。これらに基づいて暫定の軌道要素が決められている。Sednaで一番興味深いのは、その公転周期であろう。なんと11,000年(*)だそうである。Quaoarは287年程であるし、2004 DW(Orcus)は247年程、冥王星も248年余である。EKBO に属する天体としては、これが普通というか平均的な周期であろう。

 それからするとSednaは突出し過ぎている。理由はSednaの超楕円軌道にある。近日点が76天文単位、遠日点はなんと913天文単位(*)に及ぶという。まさに「驚異」の新天体発見である。小さければ余り気にもならないが、なにせ「第10惑星か」である。気にしないわけにはいくまい。参考までにS(Sedna)とQ(Quaoar)の軌道図を示す。図中のS, Qはそれぞれの現在位置である。

 

SednaとQuaoarの軌道図

  SednaとQuaoarの軌道図

 

Sednaと惑星の軌道図

 

Sednaと惑星の軌道図

 

今月のSedna(セドナ)の位置


 「今月のSedna(セドナ)の位置」には、関連情報としてSedna(セドナ)を始めとする、エッジワース・カイパー・ベルト天体群(EKBO)の毎月の位置示す占星天球図を掲載。

 


 

Sedna(セドナ)と文明史の関係

 

 これだけの超長周期の天体を、天球図解釈の上でどう扱ったらいいのか。思案に暮れるところである。試しに次の星座に移るおおよその年代をチェックしてみた。

 なお、ここで言う星座とは、あくまでも春分点を起点とする黄道12星座(tropical)であって、恒星座標系(sidereal)のものではない。春分点は地球の歳差運動によって、約72年で1°移動し、およそ25,800年かけて黄道360°を反時計回りに一周する。したがってSednaのような超長周期の天体では、一周期の間でさえtropicalとsiderealの差は甚だ大きくなるので注意が必要だ。


BC3400年頃   (遠日点) 古代文明の揺籃期
BC3000年前後 蠍座  エジプト、メソポタミア文明
BC1430年前後 射手座 クレタ、ミケーネ文明
BC20年前後  山羊座 ローマ(共和国、帝国)の
           地中海世界制覇
1050-1056   水瓶座 ヨーロッパで封建社会成立
1629-1634   魚座  ヨーロッパ世界制覇へ
            アジアの植民地化
1864-1867   牡羊座 産業革命の進展
            国民国家の成立・発展
1965-1968   牡牛座  情報革命
            グローバリゼーションの進行
2023-2024   双子座 ?
2065-2067   蟹座  ?
2076年中頃  (近日点) ?(ピーク)
2106-2108   獅子座 ?

*)年代修正(2004年9月、2005年3月)


 BC3000年以前はデータがないので、観球子が初歩的な算術計算で求めた。遠日点は天秤座の中頃、たぶん22°辺り(*)である。蠍座に移るのは、BC3000年前後(*)であろう。近日点は蟹座の7°辺り(*)である。近日点と遠日点が正対しないのは、歳差運動の影響を受けるtropical座標だからである。sidereal座標で表わせば、それぞれ双子座と射手座の12°辺り(*)となり正対する。

 星座名の横には、世界文明史上の節目となるような現象を、主にヨーロッパの歴史をベースにして記した。なにせ文明史の素人である観球子が、かなり大雑把にまとめたものである。ポイントを外した記述になっているかもしれない。多少の考え違い、用語ミスは容赦願いたい。

 この星座と文明史の関係から、tropical座標でのSednaの星座移動が、文明史の節目とかなり強くリンクしているようだ、ということに観球子は気づいた。この前提に立つと、後20年程で次なるステップ(双子座)に進み、さらに40年で次の次のステップ(蟹座)に進みそうである。

 過去の歴史の歩みからすると、途轍もない猛スピードで歴史の歯車が回っていると言えよう。現代に生きる我々は、その生涯に2度の星座移動と、それに伴う社会の大変動を体験するということになる。期待と不安の入り混じった、ちょっと複雑な気持ちになるのではなかろうか。こんなこと考えてみても、どうなる訳でもないのだが。

 



Sedna(セドナ)の近日点通過


 さて、では今からおよそ70年後の2076年中頃の近日点通過は、一体何を意味するのであろうか。遠日点通過の頃に古代文明がゆっくりと、しかし着実にその歩みを始めて以降、実に5,000年以上もの時をかけて、現代の高度な文明に到達したのである。そして、歩み始めた頃とは比較にならないような猛スピードで今も進歩、発展を続けている。

 何だか人類自らが作り上げた文明が、今や人類のコントロールを離れて、勝手にスピードを上げて進歩、発展しているかのようである。人類自身が文明を後から追いかけているようにも見受けられる。しかも文明の方はさらにスピードを上げて、主人公たる人類を引き離しにかかっているようにさえ思えてくる。

 Sednaの軌道図を見ていると、近日点というのは、ある種のピークを示していて、ここが折り返し点となって、大きく方向転換をするところ、といったイメージが思い浮かんでくる。まあ、あまり軽々に先々のことを口にするのは宜しくないので、近日点の話はこのくらいにしておこう。


 ところで現在30代後半の人たちは、ちょうどSednaが牡羊座から牡牛座に移る頃に生まれた人たちである。1965年7月始めに牡牛座に入った後、地球の公転に伴う惑星の逆行現象のため、都合7回出入りを繰り返し、最終的に1968年2月始め(*)に牡牛座に落ち着いている。この年代の人たちは、他の年代の人たちに比べると、たぶんSednaの影響をより多く受けているのではないかと推察される。ただ具体的にどのように、と言われても返答に窮するが。

 この話の締め括りは徳川家康の天球図に、最近発見された巨大天体の幾つかを加えたものにしよう。内周部は「徳川家康の天球図」に掲げたものと同じである。外周部には新たにS(Sedna), O(Orcus, 2004 DW), Q(Quaoar), A(2002 AW197), I(Ixion), V(Varuna)の6個の新天体を加えた。新規に加えたものの中で最も目を引くのは、牡羊座の29°(*)にあるQuaoarが、東の地平線から上昇してくるところである。なかなか興味深いものがある。

 

Sedna, Quaoarを加えた徳川家康の占星天球図

徳川家康の出生データ

徳川家康の占星天球図



天球図の記号の説明


徳川家康の占星天球図


 

 *) 新資料に基づいて修正
   (2004年9月、11月、2005年3月、7月、11月)



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